CIDRとは?サブネットとIPアドレスの新しい考え方をやさしく解説

1. CIDRとは何か?

CIDR(Classless Inter-Domain Routing)は、IPアドレスの割り当て方法とルーティング方法を柔軟にするために導入された仕組みです。従来の「クラスA、B、C」といった分類に依存せず、IPアドレスの範囲とプレフィックス長を使ってネットワークを表現します。

例として「192.168.1.0/24」といった形式で表記されるCIDR表記は、ネットワークの範囲をコンパクトに表現でき、現在のIPv4アドレス設計における標準的な手法となっています。

2. 従来のクラスフルアドレスの課題

2-1. A・B・Cクラスの概要

IPアドレスは元々、次のように「クラス」によって分類されていました:

  • クラスA:0.0.0.0 ~ 127.255.255.255(約1677万ホスト)
  • クラスB:128.0.0.0 ~ 191.255.255.255(約6万5000ホスト)
  • クラスC:192.0.0.0 ~ 223.255.255.255(254ホスト)

このような固定サイズの分類は、設計やルーティング上はシンプルでしたが、多くの無駄が生じていました。

2-2. アドレス空間の無駄と限界

たとえば、クラスBを1つ使うだけで約6万台分のアドレスを消費します。実際には数千台しか使わない組織も多く、大量のアドレスが未使用のまま浪費されていたのです。

また、インターネットの拡大により、ルーターが保持するルーティングテーブルも肥大化し、ネットワーク管理に大きな負担がかかるようになりました。

3. CIDRの登場と背景

3-1. IPアドレス枯渇問題への対応

1990年代、IPv4アドレスの枯渇が現実の課題となり、アドレスの効率的な利用が急務となりました。その対策として1993年に導入されたのがCIDRです。CIDRはクラスに依存しない「可変長プレフィックス」を用いて、必要な分だけアドレスを割り当てることが可能になります。

3-2. インターネットのスケーラビリティ向上

CIDRは、ルーティングテーブルの集約(サマライゼーション)を容易にし、ISPなどの大規模ネットワークでの設計や管理の柔軟性を飛躍的に高めました。

4. CIDR表記の基本と読み方

4-1. 「/24」などの意味

CIDRでは「IPアドレス/プレフィックス長」という形式でネットワーク範囲を指定します。たとえば:

  • 192.168.1.0/24 は、「先頭24ビットがネットワーク部、残り8ビットがホスト部」であることを示します。

4-2. ネットワーク部とホスト部の区切り

CIDRではネットワーク部とホスト部の境界を柔軟に調整できます。これにより、「必要なホスト数」に応じて最適なプレフィックス長を選択できるのです。

たとえば /26 は 64 個のアドレス範囲(うち 62ホスト分)を持つサブネットを示します。

5. CIDRによるアドレスの柔軟な割り当て

5-1. サブネットマスクとの違い

従来は「255.255.255.0」のようなサブネットマスクでネットワークの範囲を表現していましたが、CIDRでは「/24」といったシンプルな表記に置き換えることができます。

また、CIDRの考え方では「クラスに縛られない柔軟な分割」が可能で、例えば 192.168.0.0/23 のように2つのCクラスを統合することもできます。

5-2. サブネット分割の具体例

例:192.168.1.0/24 を 4つに分割したい場合

  • /26 を使えば 64 アドレス × 4 ブロックに分割可能
    • 192.168.1.0/26
    • 192.168.1.64/26
    • 192.168.1.128/26
    • 192.168.1.192/26

このように、CIDRを使えばIPアドレス空間を用途に応じて効率よく分割できます。

6. CIDRの利点とネットワーク最適化

6-1. アドレスの効率的利用

CIDRによって「必要な分だけIPを使う」設計が可能となり、無駄なアドレス消費を防げます。これは特に、限られたIPv4アドレス空間を有効活用する上で非常に重要です。

6-2. ルーティングテーブルの集約(サマライゼーション)

CIDRはプレフィックスの共通性を利用して、複数のネットワークを1つのエントリにまとめる「ルート集約」が可能です。たとえば、

  • 192.168.0.0/24
  • 192.168.1.0/24
    をまとめて
  • 192.168.0.0/23

という形でルーティングテーブルを簡潔にできます。これにより、ルーターの負荷が軽減され、通信の効率も向上します。

7. CIDRとVLSM(可変長サブネットマスク)との関係

7-1. VLSMとの違いと共通点

VLSM(Variable Length Subnet Mask)は、異なるサイズのサブネットを柔軟に割り当てる技術であり、CIDRと非常に密接な関係にあります。CIDRがインターネット規模のルーティングに用いられるのに対し、VLSMはLANや企業内ネットワークでの柔軟なサブネット設計に使われます。

7-2. 実務における使い分け

実際には、CIDR表記を用いたVLSM設計が一般的です。たとえば、部署ごとに必要なホスト数に応じたサブネットをCIDRで割り当てていくことで、アドレス空間の最適化が図れます。

8. CIDRの計算方法とツール

8-1. IPブロック数の計算例

  • /30 → 4アドレス(2ホスト)
  • /29 → 8アドレス(6ホスト)
  • /24 → 256アドレス(254ホスト)

上記のように、CIDRのプレフィックス長からホスト数を逆算できます。計算式は:

コピーする編集するホスト数 = 2^(32 - プレフィックス長) - 2(ネットワークアドレス+ブロードキャスト除く)

8-2. CIDR計算ツール・便利サイトの紹介

以下のようなオンラインツールを使えば、CIDRの計算やサブネット分割が簡単に行えます:

  • subnet-calculator.com
  • IPcalc(Linuxコマンド)
  • CIDR to IP Range Converter(各種Webサイト)

CIDRは、従来の固定的なクラス制に縛られない柔軟なIPアドレス設計を可能にする仕組みです。アドレス空間の有効利用、ルーティングの簡略化、サブネット分割の自由度など、多くのメリットがあります。

現在のIPv4ネットワークではCIDRは標準的な考え方であり、VLSMと組み合わせて実用的なネットワーク設計に応用されています。ネットワーク管理や設計に関わるすべての人にとって、CIDRの理解は不可欠です。

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