数千台のPCを一括管理する「IT管理者の司令塔」
企業のIT担当者にとって、社員が使う何百、何千台ものパソコンを管理するのは気の遠くなるような作業です。 「全社員のPCに新しいソフトを入れておいて!」 「Windowsの更新プログラムを来週までに全員分適用して!」 こんな指示が来たとき、1台ずつ手作業で設定していたら、何ヶ月あっても終わりません。
そこで活躍するのが、**SCCM(System Center Configuration Manager)**です。現在は名称が変わり、**MECM(Microsoft Endpoint Configuration Manager)**と呼ばれていますが、現場ではまだ「SCCM」という呼び名が定着しています。
この記事では、この強力な管理ツールが何をするものなのか、わかりやすく解説します。
1. SCCMを一言で言うと?
SCCMは、社内のPCやサーバーを一括で集中管理するためのマイクロソフト純正ツールです。
例えるなら、**「オーケストラの指揮者」**のような存在です。 指揮者(SCCM)がタクトを振れば、演奏者(社内の大量のPC)たちが一斉に同じ動き(ソフトのインストールや設定変更)をします。管理者は自分の席に座ったまま、遠隔で全社員のPCをコントロールできるのです。
2. SCCMでできること(主な機能)
SCCMには多岐にわたる機能がありますが、主な役割は以下の4つです。
① ソフトウェアの一括インストール
新しい業務アプリ(OfficeやZoomなど)を導入する際、SCCMを使えば、指定した日時に全社員のPCへ自動的にインストールさせることができます。「各自でインストールしてください」とメールする必要はありません。
② OSの展開(キッティング)
新入社員が入社した際、新しいPCにWindows OSを入れて、必要な設定をして…という作業(キッティング)は大変です。SCCMを使えば、ネットワーク経由で空っぽのPCにOSや設定を流し込むことができ、セットアップ作業を大幅に短縮できます。
③ Windows Updateの管理
「Windows Update」はセキュリティのために重要ですが、業務中に勝手に始まってPCが重くなると困りますよね。 SCCMを使えば、**「昼休み中に更新する」「特定の部署だけ先に更新する」**といったコントロールが可能になり、業務への影響を最小限に抑えながらセキュリティを保てます。
④ 資産管理(インベントリ収集)
「社内にPCは何台ある?」「誰がどのスペックのPCを使っている?」「禁止されているソフトを入れている人はいない?」 SCCMは、社内の全PCからハードウェア情報やインストール済みソフトの情報を自動で収集し、リスト化してくれます。
3. なぜ名前が変わったの?(SCCMからMECMへ)
実は2019年頃に、製品名が MECM (Microsoft Endpoint Configuration Manager) に変更されました。
これは、従来の「社内のPC(オンプレミス)」だけでなく、クラウド管理ツールである「Microsoft Intune」と連携して、スマホやタブレット、社外にあるPCも含めて統合的に管理(エンドポイント管理)していこうというマイクロソフトの方針転換によるものです。
しかし、長年使われてきた「SCCM」という名前があまりに有名なため、今でも現場では**「SCCM」あるいは「ConfigMgr(コンフィグマネージャー)」**と呼ばれることが非常に多いです。
- 旧名: System Center Configuration Manager (SCCM)
- 新名: Microsoft Endpoint Configuration Manager (MECM)
4. 導入のメリットとデメリット
メリット
- 圧倒的な効率化: 手作業を自動化し、IT担当者の残業を減らせます。
- セキュリティ向上: 全PCに漏れなくセキュリティパッチを適用できます。
- コンプライアンス遵守: 不正なソフトの使用を監視できます。
デメリット
- 構築が難しい: サーバーの知識が必要で、導入・構築の難易度が高いです。
- コストがかかる: サーバー機器やライセンス費用が必要です。
- 機能が多すぎる: 多機能ゆえに、使いこなすには専門的な知識(スキル)が求められます。
まとめ
- SCCMは、大量のPCを遠隔で一括管理する「IT管理者のための司令塔ツール」。
- ソフトの配布、OSのインストール、Windows Updateの制御などが得意。
- 現在はMECMという名前に変わっているが、現場ではまだSCCMと呼ばれている。
もしあなたが情シス(情報システム部門)の担当者なら、SCCMは強力な武器になります。逆に一般社員の立場なら、「私のPCが勝手にアップデートされたり、新しいアプリが入ったりするのは、裏でSCCMが働いているおかげなんだな」と思えば正解です。

